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【在宅緩和ケア】①-10 がんの父と娘【娘一家が不在!】

〇月×にち.

みなさま,こんばんわ.

今日は,膀胱の患者さん宅で患者さんと奥様とわたしでお留守番をしています.
このご夫婦が結婚したころに,老々介護になったらどうする,という話し合いをするなんて考えられなかったのでしょう.
 
なにゆえわたしが今日,このお宅で患者夫婦とお留守番をしているのかというと.
一昨日,娘さんの旦那様のお父様が亡くなったんです.
昨日通夜,本日お葬式,夜初七日です.
なので,昨日から足が悪いので介護するのが難しい奥様がお留守番を一人でしてるんですよね~.
実は,こんな時のために訪問介護を週1日入れてたんです.
本当は必要ないのですが
日頃全く頼んでいなかったら,
こういう時に突然来てくれと言われても行けないからと言われて
頼んでいたのに,本当にそんな時が来たら,
土日だから人が手配できないと断られてしまった...
奥様の家政婦さんは土日は来てもらっていないので,
よそのお宅に行っていて来れない.
幸いにも今は腎瘻ですので,おむつ交換があまりなくて,何とかなります.
老々介護でどうなることか,不安に思いながら娘さんはこう言って出かけました.
いいんですよ.こうして強制的に夫婦で過ごさせるのも.
娘さんからすると,お母様がお父様の介護から逃げてしまったようにみえて
わたしが介入し始めたころには
いろんな不満があり,わたしもしばらくにらみつけておられました(笑)
まあ,そんなことはよくあることなので,
なのでお茶していろんな話を毎日していたわけです.
事情聴取するような雰囲気でやると本当のところは聞けません.
なので,普段の何気ない会話の中で知りたいことを引き出していく.
意外に高度なテクニックを要します.
こういう事情で,お嬢様がお母様とお父様に神様がくれた時間だと言ったので
昨日はわたしも気になりながらもほったらかしにしていました.
今日は,昼間から夜までここにいようと思って.
来てみたらなんとかなってました.
夜遅くに家政婦さんが来てくれたようで.
夜は一度車いすでテーブルに着いたそうです.
今日は,わたしが車いすに乗せてテーブルに????
患者さんの好きなマグロの赤身のお寿司を握ってもらって持ってきました.
1かんを3つにわけて小さく握ってもらい,食べやすく作ってもらいました.
銚子丸というただの回転すしなんですが,おいしいんです.
しかも,「先生,今日も仕事ですか?頑張ってますね~.
いつもありがとうございます.」って????
前に肺癌の患者さんのところに毎日言ってた時
よくとおりかかって行ってた銚子丸が近くにあるので.
持ってきたら患者さん,とっても喜んで食べました.
わたしはお寿司を握っていただいている間に,
大好きなアラ汁をいただいておなかいっぱいなので
夕方奥様と一緒に持参したお寿司をいただきます.
一晩がんばった奥様と患者さんにわたしからのご褒美です????
だって,昨日,お嬢様がしばらくいなくなるということを突然告げられて,
患者さんは機嫌が悪くなり.
なんで死んだんだ?!と涙ぐんであちらのお父様に怒ったりして(笑)
まあでも,そういうのを「かわいい????」と思えるくらい
娘さんに今は余裕があるということです.
わたしたち,昨日はそれをきいて隣でけらけら笑ってたんです.(笑)
勝手なこと言うよね~って.
いいんですよ.いろんな人たちがいて.これはこれでいいんだ.
そう思える.
普通ママがパパをみるよね,なんでわたしがみないといけないの?
とか思うとやってられませんからね.
同じ景色が視点を変えると全く違うものになります.
なので,最初の1か月くらいは患者さんというよりは娘さんと向き合って,娘さんの視点を変えるという作業を
ずっとしていたわけです.
患者さんが娘さんのお宅で最後まで心地よくいられるように.
主治医として環境を調整する.医師の仕事です.
わたしはあくまでも患者さんの主治医なので,患者さんが望むこと=家で死にたい,が実現するように調整する.
患者さんの思いが実現するように頑張る.
幸せかどうかは心が決める.
どんな状況でも不幸じゃない.
逆も真なり.
どんな状況でも幸せじゃない.
お金でも権力でも幸せを得られない.
今日は,昨日ほったらかしにしたので
夜までここに透明人間みたいにいて,仕事をします.
誰もいなかったら私がやる.
これ.医師の仕事ではない,と言ってしまえばそれまでなのですが.
困った人に手を差し伸べる.
医療の基本ですよね.
わたしのことを原理主義という人たちがいるけど,確かに原理主義ですよね.
わたしの人気の根源はこの,医師としての原理主義性にあります.
私は誰かのシェルターでありたい.
今日はおいしいマグロのお寿司を食べて,患者さんは今,「銀座においしいものを食べに行きたい」と言っています(笑)
奥様は,「先生のおかげで主人が生き返った」と言っています(笑)
いや.まだ死んでないからっ!!
楽しそうにお二人で過ごしていますよ.今.
また行こうね???? 今度は銀座だね.次は奥様も一緒にね.(前回,照れ臭いのか一緒に来てくださいませんでした.)
それにはもうちょっとリハビリしようね????
終末期でも適切な緩和ケアを受けると生存期間が延長するというデーターはあるのですが.
今回,患者さんにそれが本当だと教えてもらいました.
いつまでもわたしも青二才.
患者さんに教えていただくことばかりです.
医師を育てるのは患者さんですね(^_^ゞ
わたしはわたしの患者さんたちの遺産なんです.